年末が近づき、おせちや鍋などで魚介類を食べる機会が多いですよね。数の子、エビ、ブリ、タイ、あわび、昆布巻きなど、美味しい”海の幸”がたくさんあります。
でも、この美味しい”海の幸”が食べられなくなってしまうかもしれないことを知っていますか?
2006年にアメリカの科学雑誌『サイエンス』に発表された論文で、2048年には食用可能な魚介類のほとんどが絶滅してしまうと言われています。
同様に、クロマグロやウナギが絶滅の可能性がある“レッドリスト”に指定されたことは衝撃的でした。
日本人の食生活に欠かせない魚介類を、子供や孫の世代にも残したいですよね。そのためには、環境への影響を最小限に抑え、持続可能な形で漁業を進めていく必要があります。
そうした配慮がされた水産物のことを“サステナブルシーフード”といいます。
具体的にどういったものを指すのか、自分たちは何ができるのかをご紹介していきます。
サステナブルシーフードとは“将来食べ続けられる配慮がされた水産物”のこと
“サステナブルシーフード”という言葉はあまり馴染みがないかもしれませんが、欧米を中心にすでに浸透していっている考え方です。
“サステナブル”という言葉は“持続可能な”という意味です。
さまざまな分野で持続可能な暮らしについて注目されていますが、そのなかでも水産物の問題は、世界的にも大きな課題です。
“フィッシュ&チップス”がなくなる危機がきっかけ?
90年代はじめのイギリスで、国民食である“フィッシュ&チップス”の原材料になっているタラが激減し、食べられなくなるのではないか?という危機意識が話題になりました。
乱獲により、本来なら自然に繁殖して元の数に戻るはずが、どんどん数が減っていっており、近い将来にはもう食べられない可能性がありました。
そのため、継続して水産物が食べられるようにするために、“適切な量を獲ること”や“養殖で増やすこと”を行って、海に暮らす生き物の量が減らずに済むようにしていく必要があるのです。
水産資源を守ることはSDGsの目標の1つでもある
2015年に国連で採択された、「持続可能な開発目標」、通称「SDGs」においても重要なテーマの1つとなっています。
17ある2030年までに達成する目標のうち、目標14「海の豊かさを守ろう」で、水産資源を守ることが含まれています。
持続的に水産物が食べられるように、過剰な漁業の規制や管理、それに伴う法整備が進められています。
覚えておきたい認証制度 “MSCラベル”と“ASCラベル”
実際にサステナブルシーフードに関する取り組みとしてわかりやすいものが、認証制度です。オーガニック食品などでも「この商品は確実にオーガニックである」と証明することで、消費者から見て簡単に違いがわかるようになっています。
同様にサステナブルシーフードにおいても、世界的に権威のある認証団体は2つあります。
①MSC「海のエコラベル」
海洋管理協議会(Marine Stewardship Council)による認証で、規格に適合する持続可能な漁業で獲られた水産物に適用されるもの
②ASCラベル
水産養殖管理協議会(Aquaculture Stewardship Council)による認証で、規格に適合する責任ある養殖で生産された水産物に適用されるもの
これらのラベルがついている水産物はサステナブルシーフードだとはっきりと言えます。
水産資源を守るために私たちにできること
そんなサステナブルシーフードの取り組みに対して、私たちは何ができるのでしょうか?
日々の暮らしにおいてできることを例に見ていきましょう。
1.料理の食材に認証食材を使おう
上記にあるMSC・ASCラベルがついた食材を購入することで、その取り組みに参加していることになります。
大手スーパーマーケットのイオングループや、日本生活協同組合連合会(コープ)などでは積極的にサステナブルシーフードを取り扱っています。
また大手通販サイトでも、MSC・ASC認証された商品の扱いが増えています。
特に、今の時期はおせち料理に使う数の子やタイ、鍋のカニなど、メインディッシュに魚介類が使われる機会も多いので、その食材を認証されたものに変えてみるといいかもしれません。
2.認証食材を使った加工食品・外食料理を食べよう
さらに、最近は原材料の水産物が認証食材を使った加工食品のメニューも出てきました。
魚の煮付けや白味魚のフライなどのおかず、コンビニ大手のミニストップのおにぎりなど、手近なお店で購入することもできます。
また、飲食店でもサステナブルシーフードを取り入れる動きがあります。パナソニックは社員食堂で取り入れていますし、スウェーデン発の家具店IKEAでは、併設のレストランで販売する魚介類はMSC認証を取得したものです。
欧米に比べると日本での浸透はまだこれからですが、少しずつ普及し始めています。
3.水産資源の大切さを日ごろから伝えよう
サステナブルシーフードは、広まりはじめているとはいえ、一般的になるまではまだ道のりが長いといえます。そんな時に大事なのは、こうした水産資源の大切さを伝えていくことだと思います。
今食べている食べ物が、いくらでもある訳ではないことを知り、大切にしていくことが、後世に続く食生活を守ることの1つに繋がる一歩になります。
地球環境を守りながら美味しい冬を楽しむ!
“サステナブルシーフード”という言葉は馴染みがないかもしれませんが、持続可能な形で水産物が子供・孫の世代まで長く食べられるようにしていきたいですよね。
欧米ではごく一般的な考えですが、日本でメジャーになるにはまだ少しが時間が必要そうです。
まず個人でできることとしては、MSC・ASCラベルがついている食品をなるべく食べるようにすることで、地球環境を守る一助になります。身近なところから取り入れて、美味しい冬を楽しみましょう。