衣服ロス問題の解決にもつながる上質なリサイクルウールブランド3選

衣服ロス問題をご存じですか?
生産者による過剰生産や消費者からの注文キャンセル、商品の売れ残りなどによって、着られる状態の衣類にも関わらず、大量の在庫を抱えたり処分や破棄に多額の費用が要する問題です。

この問題を解消する取り組みのひとつにリサイクルウールがあり、サスティナブル観点から注目されています。
マーサ エシカルやプラナ、毛七をはじめ多くのブランドでも取り組みはじめているリサイクルウールについて、原料調達や製造過程も踏まえて紹介します。

身近な衣類から生まれ変わるリサイクルウールの原料調達の方法とは?

主にみなさんが着なくなった身近な衣類がリサイクルウールの原料に生まれ変わります。

原料の調達方法はさまざまあります。その一部を見ていきましょう。

店舗に持ち込まれた古着から原料調達する

衣料品を扱うメーカーや大手百貨店では、着なくなった衣類を回収しています。回収した衣類はリサイクルウールの原料として生まれ変わります。国内ではウールの原料の調達が難しいため、古着からウールの原料を調達する文化が根付いています。

例えば、AOKIは日本初の「ウール・エコサイクル・プロジェクト」を立ち上げました。この取り組みは20年前から継続して行われています。気軽に店舗へ持ち込むことができ、着なくなった衣類はクーポンと交換できるなどお財布にも環境にも優しい取り組みです。

アパレル業界の在庫から原料調達する

株式会社shoichiは、アパレル在庫処分を行う会社であり、アパレル在庫で処分対象となった衣類をリサイクルウールの原料として買い取ります。

アパレル在庫処分を行う会社には、アパレル業界など不良在庫を抱えるブランドやメーカーから衣類や在庫を買い取り、古着などの中古品・緩衝材などの業務資材・途上国への衣類支援として二次流通する会社が多いです。

しかし、二次流通させていくなかでコスト面の問題やリユーズを消化することの難しさなどがあり、株式会社shoichiは買い取った在庫をリサイクルウールの原料としたMARTHA ETHICALを立ち上げました。

このようにリサイクルウールの原料を調達する方法はさまざまあります。
次は、調達した原料がどのようにウール製品へ変わっていくのかを見ていきましょう。

糸を紡ぎ編み立ててできあがるリサイクルウール

調達した原料は、大まかに3つの過程を経て製品に生まれ変わります。

①原料からリサイクルが可能な部分だけを残す

調達した原料は色や素材、ボタン・ファスナーなどの副資材の種別ごとに細かく分けられ、純粋にリサイクルが可能な部分のみ残します。
そうして分けられたウールの生地を細かく砕く過程に続きます。

②生地を細かく裁断しワタ状にする

この過程では、再利用するウールを生地にするためにワタ状に裁断する過程です。
まず、油打ちと呼ばれている生地にオイルを染み込ませ、柔らかくなった生地を細かく裁断され、さらにワタ状へと細かくしていきます。
生地がオイルになじんでいないと静電気によって生地がほぐれなかったり、細かくならないため、油打ちの作業はとても大切です。

このように生地を細かくしていき、糸へと生まれ変わります。

③さまざまな生地を調合して糸に仕上げ、できあがった糸を編み立てる

油打ちを経て細かく裁断されたワタ状の生地は、この過程で糸に仕上がっていきます。
糸を引っ張りながら縒りをかけることで通常の糸よりふんわりした仕上がり、また糸の強度を高めたりコストダウンを行うためにナイロンなどを混合する場合もあります。

こうして仕上がった糸を編み立てることで、ウールとして再利用されていきます。

リサイクルウールへの取り組みが注目されているブランド3選

衣類ロス問題に向けいち早く動いた「MARTHA ETHICAL(マーサ エシカル)」

レディースアパレルブランドMARTHA(マーサ)と在庫処分業の会社株式会社Shoichiがコラボして誕生したアパレルブランドがMARTHA ETHICALです。

冒頭でも述べた衣類ロス問題を解決すべく誕生したブランドであり、完全再生素材を用いたニットなどが販売されています。

反毛と呼ばれる技術などを用いた生まれ変わったウールはアップサイクルされており、着心地や触り心地も抜群です。また、ユニセックスアイテム中心で日常でも着やすいアイテムをお手頃な価格から展開されています。

「再生繊維を使用したウェアーを着用すること」「エシカル消費の思想が反映されたものを日常に着用すること」こそ、現代での本当の贅沢とした思想でブランド展開するMARTHA ETHICALの今後が楽しみです。

地球にやさしくぬくもりを与えるライフスタイルブランド「prAna(プラナ)」

prAnaはヨガ、クライミングを愛するご夫妻がきっかけで南カリフォルニアで生まれたライフスタイルブランドです。
自然を愛していた2人は良いモノを良い方法でつくることを大切にしており、その素材選定や製造方法からはサスティナブルなコンセプトが伝わるエピソードが多数あります。

例えば、
・商品発送時に利用する箱は、近所のスーパーから果物などの空き箱を再利用した
・商品タグは新聞紙や雑誌などの古紙を再利用して作成していた

など、自然に配慮した製品づくりがわかります。

そして、サスティナブルな取り組みを全従業員のミッションと考えるprAnaは、環境に配慮した活動のなかでリサイクルウールと偶然出会いました。
動物たちへの負担・リスクの軽減、製造過程での資源・水・エネルギーなどの軽減により、上質で着心地抜群のニットが楽しめます。

半世紀前から受け継がれている国産のリサイクルウール「毛七(けしち)」

毛七は、尾州地域(愛知県尾張西部から岐阜県西濃地域)にある再生ウール織物のブランドです。

古くから織物生産が盛んにおこなわれてきた尾州は、日本一の毛織物産地です。
しかし、牧羊に苦戦した経験から羊毛(ウール)の生産は少なく貴重な天然の繊維とされていました。

「豊かな暮らしを与えたい」「資源を大切にする文化を後世に残したい」という考えから、着なくなった衣類を集めて再び繊維に戻し再生する羊毛再生文化が尾州に生まれました。

そんな文化を大切に半世紀に渡り大切にしているのが毛七では、チェックやストライプ柄などの多種多様な生地からできる、着心地抜群のおしゃれな衣類やブランケットなどが楽しめます。

このように、世界ではさまざまなブランドがリサイクルウールに取り組んでおり、サスティナブルな社会に向けた動きが加速しています。

高級で有名なブランドの服から、長く着られるサスティナブルな服を選択しよう

2015年に国連で採択されたSDGsが社会・企業全体に広がりを見せています。リサイクルウールは、サスティナブルな社会の実現に向けた取り組みのひとつと言えます。国内・国外の衣類メーカー・ブランドでのリサイクルウール製品や取組みが徐々に増えつつあります。環境や社会に配慮され、製品のこだわりや職人が丹精に込めたリサイクルウール製品は触り心地抜群です。

リサイクルウールが一般的になる傾向となり、私たちの衣類の価値観も徐々に変化していくでしょう。
衣類のリサイクル、アップサイクル・リサイクルされた衣類を着こなす未来もそう遠くありません。

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