最近、雑誌やテレビ、SNSなどで、「ヴィーガン」という言葉を見聞きすることが増えてきました。海外セレブがヴィーガンを取り入れているといった話題などから、なんとなく「美容に良さそう」というイメージを持つ人もいるかもしれません。
一方で、「肌トラブルが起こる」「肌が汚くなる」という噂もあり、実際はどうなのか気になっている人も多いのではないでしょうか。ここでは、ヴィーガンの特徴と、ヴィーガンを実践することによる肌へのメリット・デメリットのほか、実践する際の注意点を解説します。
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ヴィーガンとは完全菜食主義者のこと
ヴィーガンとは、植物性の食品しか口にしないライフスタイルのことで、日本語では「完全菜食主義者」と訳されます。
「植物性の食品しか食べない」と聞くと、ベジタリアンを思い浮かべがちですが、ヴィーガンとベジタリアンには考え方に違いがあります。また、ヴィーガンの生活様式は、食事に限ったものではありません。ここではまず、ヴィーガンの特徴やベジタリアンとの違いなどについて確認しておきましょう。
ヴィーガンはベジタリアンの中のひとつ
ベジタリアンとは、さまざまなタイプの菜食主義者を総称した言葉です。菜食主義と一括りにされがちなベジタリアンですが、実はいくつかのタイプに分類されます。
例えば、植物性食品に加えて乳・乳製品などを食べる「ラクト・ベジタリアン」や、それに加えて卵も食べる「ラクト・オボ・ベジタリアン」、肉類やゼラチンは避けるけれど魚、卵、乳製品は食べる「ペスコ・ベジタリアン(ペスカタリアン)」などです。
その中で、動物性の食品をまったく食べないのがヴィーガンです。つまりヴィーガンとは、ベジタリアンに含まれるひとつのタイプを指します。
ヴィーガンは一切の動物性食品を食べない
ヴィーガンは、肉類や魚介類だけではなく、すべての動物性食品を食べません。卵や乳・乳製品、はちみつ、ゼラチンなどを含む、動物由来の食品を避けた食生活を送ります。そのほか、白砂糖は精製過程で牛骨が使用されていることがあるため、使用を避ける人もいます。
食べ物だけでなく動物由来の製品は使わない
ヴィーガンが動物性のものを避けるのは、食品だけに限ったことではありません。身につける衣類や、普段使用する生活用品についても動物由来の製品を避けるスタイルを、「エシカルヴィーガン」と呼びます。
エシカルとは、「倫理的な」という意味です。動物の命を尊重するために、完全菜食に加え、ファーやウールといった動物由来の衣類や、動物実験が行われている化粧品や洗剤などは使用しません。
一方で、食事のみヴィーガンのスタイルをとることを、「ダイエタリーヴィーガン」と呼びます。ダイエタリーとは「食事上」という意味で、動物由来製品は使用するけれど動物性食品はとらないというのがダイエタリーヴィーガンの考え方です。
根底にあるのは動物愛護と環境保護
ベジタリアンになる背景には、アレルギーや病気、宗教、自身の考え方など、人によってさまざまな理由があります。その中でも、ヴィーガンの考え方の根底にあるのは、「動物愛護」と「環境保護」です。
ヴィーガンでは、食用や衣料用といった人間の目的のために動物に苦しみを与え搾取することを、できる限りやめようと考えます。また、家畜を育てるには多くの穀物や水が必要であり、森林伐採や温室効果ガスの排出につながるおそれがあります。これらの課題を解決するため、ヴィーガンのライフスタイルを取り入れる人が増えているのです。
ヴィーガン生活の肌へのメリット
動物愛護や環境保護といった考え方に加えて、美容目的でヴィーガンの食生活を実践する人もいます。ヴィーガンを実践することで、肌にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
動物性の脂質をとらないので皮脂のバランスが整う
肉類や脂っこい物を多く食べていると、皮脂の分泌量が増え、毛穴詰まりやニキビを引き起こすことがあります。
動物性の食品を食べないヴィーガンは、過剰な皮脂分泌の原因になる動物性脂質をとりません。特に、これまで肉中心の食生活で、肌のべたつきなどに悩んでいる人の場合、ヴィーガンの食生活を実践することで、皮脂のバランスが整う可能性があります。
食物繊維を豊富にとることで腸内環境が整う
腸内環境の悪化は、ニキビや乾燥、くすみなど、さまざまな肌トラブルを招く原因になります。腸内環境を整えるために効果的なのが、食物繊維です。
ヴィーガンの食生活で中心となる野菜や豆類、海藻類には、食物繊維が豊富に含まれています。腸内の善玉菌の働きを助ける食物繊維を多くとることで腸内環境が整い、便秘の解消にも役立つでしょう。
ビタミンやミネラルをしっかり摂取できる
ビタミンやミネラルは、美しく健康的な肌を目指す上で欠かせない栄養素。例えば、緑黄色野菜に豊富に含まれるビタミンAは肌を健康に保つのに役立ち、柑橘類に多いビタミンCは肌の老化を防ぐ働きがあるといわれています。
ヴィーガンは、野菜や果物中心の食生活なので、各種ビタミンやミネラルをしっかりとることができます。複数の野菜や果物を食べることによって、さまざまなビタミンをバランス良く摂取できるでしょう。
ホルモンバランスが整う
肉や魚を食べないヴィーガンは、たんぱく質不足を防ぐために、積極的に豆類を食べる必要があります。豆類の中でも身近に取り入れやすいのが、大豆や大豆食品でしょう。大豆には、女性ホルモンと似た働きをする「大豆イソフラボン」が多く含まれています。大豆イソフラボンを継続してとることによってホルモンバランスが整い、更年期障害などのトラブル予防にもつながるといわれています。
ヴィーガンで肌が汚くなるって本当?
ヴィーガンには、「肌トラブルが起きる」「肌が汚くなる」という噂もあります。ヴィーガンが肌に良くないといわれるのはなぜなのでしょうか。それには、下記のような要因が考えられます。
たんぱく質不足による代謝の低下
肉類や魚介類、乳製品などを食べない食生活では、どうしてもたんぱく質が不足しがちです。たんぱく質が不足すると筋肉量が低下し、代謝が落ちる可能性があるでしょう。肌のハリや弾力を保つコラーゲンをはじめ、髪や爪などもたんぱく質から作られているため、摂取量が足りなければ肌荒れやカサつきなど、美容面に悪影響を及ぼします。
そのような事態にならないように、ヴィーガンを実践するときには豆類や穀類を積極的に食べるなど、意識してたんぱく質を補う必要があります。
脂質不足による肌の乾燥
ヴィーガンを実践する人の中には、「脂質=動物性」というイメージから、植物性オイルまで避けようとするケースがあります。極端な脂質不足は肌の乾燥を招き、うるおいやハリ・ツヤを低下させます。アボカドやナッツなどの良質な油を含む食品をとり、脂質不足を防がなければなりません。
栄養バランスの偏り
動物性食品を完全に避けるヴィーガンは、一般的な食事に比べて栄養バランスが偏りやすくなります。特に、ヴィーガンで不足しやすいといわれているのが、たんぱく質のほか、鉄やビタミンB、ビタミンD、カルシウムなどです。
肌だけでなく、全身の健康のためにも、栄養バランスを意識したメニューを工夫することが大切です。
少しずつヴィーガン生活を取り入れるなら?
動物愛護や環境保護といったヴィーガンの考え方に共感し、「ヴィーガン生活を始めたい」と思った場合でも、いきなり動物性食品をまったく食べないようにするのはリスクがあります。日常的に食べていた肉や魚を完全に断つのは難しいですし、急激な食生活の変化は、健康にも悪影響を及ぼしかねません。
菜食中心の食生活を目指すなら、まずは「週末だけヴィーガン生活にしてみる」「卵や乳製品などは食べるベジタリアンから始める」など、緩やかにスタートするのがおすすめ。
体調に異変を感じた場合は、決して無理に続けてはいけません。その場合は、肉や魚を控えめにしつつ、動物由来の衣類や製品の使用を避けるなど、食事以外の部分でヴィーガンの考え方を取り入れるのもいいでしょう。
ヴィーガンの食事についてはこちらの記事もご覧ください。
自分に合った無理のないヴィーガン生活を
ヴィーガン生活にはさまざまなメリットがある一方で、リスクもあります。たんぱく質不足や脂質不足による肌への悪影響を防ぐには、栄養バランスを意識するなど十分な配慮が必要でしょう。
最近では、日本でもヴィーガンに対する認知が広がり、ヴィーガン料理を楽しめるレストランやヴィーガン対応の商品なども増えました。大豆ミートなども手に入りやすくなり、動物性食品なしでも、満足いく食事ができるようになってきています。
ヴィーガンを知ることは、動物の命や地球環境を考えるきっかけになります。興味のある人は、できる範囲から少しずつ、ヴィーガンの生活様式を取り入れてみてはいかがでしょうか。
ヴィーガンのライフスタイルについてらはこちらの記事もご覧ください。