歴史は面白いが、とっつきにくい?
こんなイメージを持つ読者の方もいるのでは。かくいう筆者も大学時代経済史を専攻しておきながら、普段は一般的な小説には手が伸びるものの、なかなか歴史の分野は億劫に感じてしまっていたことがあります。
こんなイメージを持つ読者の方もいるのでは。かくいう筆者も大学時代経済史を専攻しておきながら、普段は一般的な小説には手が伸びるものの、なかなか歴史の分野は億劫に感じてしまっていたことがあります。
ただ、今では「歴女(れきじょ)」と言われる歴史の持つ壮大なストーリーを愛する女性や、子供から大人向けまで広く歴史に関連するアニメ、漫画も多く出版されているのも事実。
そこで今回は、歴史に興味は大いにありつつもなかなかきっかけを掴めなかった筆者でも感動した過去の激動の世界が垣間見える歴史小説を厳選して3つご紹介します。「歴史を学べば将来が見える」とは所属した大学の研究室教授の受け売りですが、歴史の主人公に自分自身がなったつもりでその時代を生きることで、今にも通じる生き方のヒントが何か掴めるかもしれません。
豊臣秀吉が唯一落とせなかった忍城主を描く 『のぼうの城』和田 竜著
【あらすじ】
2012年秋映画化原作!戦国エンタメ大作
戦国期、天下統一を目前に控えた豊臣秀吉は関東の雄・北条家に大軍を投じた。そのなかに支城、武州・忍城があった。周囲を湖で取り囲まれた「浮城」の異名を持つ難攻不落の城である。秀吉方約二万の大軍を指揮した石田三成の軍勢に対して、その数、僅か五百。城代・成田長親は、領民たちに木偶の坊から取った「のぼう様」などと呼ばれても泰然としている御仁。武・智・仁で統率する、従来の武将とはおよそ異なるが、なぜか領民の人心を掌握していた。従来の武将とは異なる新しい英傑像を提示した四十万部突破、本屋大賞二位の戦国エンターテインメント小説!(小学館 公式HPより)
【ポイント】リーダーに優秀さは不要
能楽師・野村萬斎氏の主演で映画化にもなった本作品。人より能力的には欠けるとみられ童のような城主である主人公の物語。人柄で家来や百姓までを巻き込んで智将・石田光成の2万の軍勢に戦略をもって立ち向かっていく躍動感ある描写は必見。特に、リーダーは頭が切れて優れているものが勝つのではなく、人の心を魅了し鷲掴みにし動かしていくものがリーダーシップを発揮できるという点を学べる一冊。芸達者な娘である甲斐姫との親子のやり取りも一興。歴史小説でありながら、解説も所々にあり戦国時代の事をあまり知らない初心者の方でも読みやすい構成になっています。
出光創業者の実話「海賊と呼ばれた男」百田 尚樹著
【あらすじ】
すべてのビジネスマンに捧ぐ。本屋大賞の話題作、早くも文庫化!ページをめくるごとに、溢れる涙。これはただの経済歴史小説ではない。一九四五年八月十五日、敗戦で全てを失った日本で一人の男が立ち上がる。男の名は国岡鐡造。出勤簿もなく、定年もない、異端の石油会社「国岡商店」の店主だ。一代かけて築き上げた会社資産の殆どを失い、借金を負いつつも、店員の一人も馘首せず、再起を図る。石油を武器に世界との新たな戦いが始まる。石油は庶民の暮らしに明かりを灯し、国すらも動かす。「第二の敗戦」を目前に、日本人の強さと誇りを示した男。(講談社BOOK倶楽部 より)
【ポイント】信念を体現し続けてこそ人は惹かれる
『永遠のゼロ』でも話題になった小説家の百田尚樹氏による実話に基づく歴史経済小説。映画・コミックも出版される本作ですが、上下巻で800ページを超える大作。しかしながら、店主の数々の困難における覚悟が読み進める手を止めさせません。特に前半戦だけでも、戦後仕事ゼロから一人の社員を解雇にすることなく仕事を創っていく姿、本当に資金が底を尽きかけた時の夫婦の会話など、苦境にこそ人の本質が垣間見えます。人間味あふれ大志を掲げ不退邁進するリーダー像がここにある。熱量溢れる作品です。
生き様がかっこいい 『坂の上の雲』司馬 遼太郎著
【あらすじ】
松山出身の歌人正岡子規と軍人の秋山好古・真之兄弟の三人を軸に、維新から日露戦争の勝利に至る明治日本を描く大河小説。文庫本 全八冊(株式会社 文芸春秋 より)
【ポイント】激動の時代に男一人何を成すのか
言わずと知れた司馬遼太郎氏の初の近代長編小説。ドラマ化もされていますが、維新から日露戦争終結までの明治日本を描いた歴史小説です。維新を経て近代国家の仲間入りをしたばかりの「小国 明治日本」と、主人公たちを軸にその明治という時代を生きた「楽天家たち」の対比も描いた本作品。主人公の一人である好古が、この勝ち目の大きいとは言えない戦の中で、己がなすべきことを問いもがき続けるシーンは、現代でも不偏の「誰が為に事を成すか」というテーマを問いかけるものかもしれません。後半は少々難解な表現もありますが、読み進める内に手が止まらない読み応えばっちりの作品です。
まとめ
「歴史=難しい」このイメージが払拭されるだけでも、読書の世界観は大きく広がります。時間のある今の時期にこそ、歴史という奥深い物語に足を踏み入れて、主人公を自身に投影させて世界を動かしていく体験をしてみてはいかがでしょうか。