【前編】アジア初のブルーフラッグ!湘南発、一人の情熱から広がる海とわたしたちの未来

【片山 清宏(かたやま きよひろ)】NPO法人湘南ビジョン研究所理事長。神奈川県藤沢市出身。2011年に湘南ビジョン研究所を設立し、海の環境問題に取り組む。翌年には、市民主体のまちづくりビジョン「湘南都市構想2022」を策定し、マニフェスト大賞(優秀賞・審査員特別賞)を受賞。海岸の国際環境基準「ブルーフラッグ」の認証取得を推進し、2016年に鎌倉の由比ガ浜海水浴場でアジアで初めてのブルーフラッグを取得した。2019年「かながわ地球環境賞」受賞。

今回登場してくれるのは、「海を守り、未来をつくる」をテーマに活動を続けるNPO法人湘南ビジョン研究所・理事長の片山 清宏さんです。

湘南の海を守り、次世代に引き継いでいきたいという想いで2011年に湘南ビジョン研究所の活動を始められ、2016年に神奈川県鎌倉市の由比ガ浜海水浴場でのアジア初のブルーフラッグ取得に貢献されました。

そんな片山さんのストーリーをご紹介していきます。

< 目次 >

● 湘南育ち、年間300日サーフィンをしていた学生生活
● 社会に役立つような仕事をしたいと行政の道へ
● 周囲の反対を押し切って選んだ「松下政経塾」への道
● メンバーを一人ひとり口説き、2年で応援者は500人に

湘南育ち、年間300日サーフィンをしていた学生生活

神奈川県藤沢で生まれ育ち、海が大好きな片山さん。

高校からウインドサーフィン、大学からはサーフィンに打ち込み、日常にはいつも海がある環境で、年間300日以上サーフィンをしていた時期もあったのだとか。そして、全日本学生サーフィン選手権大会では4位に入賞した経歴もお持ちです。

そんな学生時代を過ごした片山さんは、大学を卒業し厚木市役所に入庁。その背景には、幼いころに医師だったお父様を亡くされ母子家庭で育った経験があるのだと話してくださいました。

社会に役立つような仕事をしたいと行政の道へ

母子家庭で育つなかで、たくさんの人に助けてもらってきたと感謝の想いを話してくださった片山さん。

「奨学金をもらって育ててもらっていた。だから今度は恩返しの気持ちも込めて何か世の中の問題を解決したい」

と行政の道に進んだそう。

その想いは、今の湘南ビジョン研究所での活動にもつながっています。片山さんの原動力やエネルギーは「社会のためになにかできないか?」というところから来ているのだと伝わってきました。

その後、海外派遣を経験し、神奈川県庁でも活躍された片山さんですが、あるきっかけから約10年間の行政マン生活を終えることを決意します。

周囲の反対を押し切って選んだ「松下政経塾」への道

市役所で国民健康保険の窓口を担当した4年間、「目の前にいる一人」すら助けられないという現実に向き合ったという片山さん。

リストラにあったり、離婚したり、生活保護が必要になるなどの問題を抱えている人が窓口に来ても、制度や法律の枠内で決まっていることしかできず、柔軟には対応できなかったのです。

そんな歯痒さから、片山さんは、行政での仕事を辞めて「松下政経塾」で学ぶことを決めました。

その決断は、周囲から猛反対を受けます。そんななかで唯一賛成してくれたのは、当時94歳のおばあさまだったそう。

「松下幸之助さんの教えを学んで世の中の役にたてる人になりなさい」というおばあさまの背中押しもあり、松下政経塾へと進んだ片山さん。

そこは、志と人間を磨く「道場」のようなところだったそうです。

メンバーを一人ひとり口説き、2年で応援者は500人に

松下政経塾に入ったことをきっかけに、片山さんはそれまでも取り組んでいた海のごみ問題の根本解決に乗り出しました。

「ただビーチクリーンをやっていても解決しない」と悩み続けていたなかで、「ブルーフラッグ※」の取得が根本解決につながる!と気づきます。

※「ブルーフラッグ」は、ビーチ、マリーナの国際環境認証です。水質、環境マネジメント、環境教育、安全とサービスについての基準を達成することによって与えられます。(引用元:特定非営利活動法人 FEE Japanホームページ)

長年の取り組みのなかで、海のごみはビーチだけでなく発生源の河川や街を含めた地域全体で、自治体・企業・市民が連携して取り組まない限り解決できないという結論に至ったのです。

そのためにはたくさんの人と協力し、一致団結して取り組んでいく必要がありました。

「最初は自分一人で、中学の同級生に自分の計画を書いたA4の紙を見せて口説いていきました。35歳にもなってどうしたんだと、相手もびっくりしたと思います(笑)片山がそこまで言うなら協力するよと、5、6人の親友がまず集まってくれました。」

そこから週末にビーチクリーン、ミニフォーラム開催などの活動を広げていった片山さん。

最初は10人くらいのところから、「アジア初ブルーフラッグを自分たちのビーチに立てよう!」という片山さんの熱心な呼びかけに呼応して、2年で500人まで応援者が集まるようになりました。

何も実績がないところから500人もの応援者ができた体験は、片山さんにとって「必ず協力してくれる人がいる」という強烈な成功体験となっているそう。

こうして、片山さんは2013年に湘南ビジョン研究所をNPO法人にします。

・・・

後編では、ブルーフラッグ取得に向けた活動やそこにかける片山さんの想い、未来に描いているビジョンをお届けします。

お楽しみに。

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